「自分の死後、葬儀や遺品の整理などの手続きで家族や親族に負担をかけたくない」このように考える方は少なくありません。
そこで注目されているのが「死後事務委任契約」です。
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に、葬儀や遺品の整理などの死後の事務を、信頼できる人に任せる契約のことです。
この契約を結ぶことで、家族や親族に負担をかけることなく、自分の希望をかなえることができます。
しかし、死後事務委任契約を結ぶ際には、以下の2つの悩みがつきものです。
- 誰に委任するか
- 契約内容をどうするか
そこでこの記事では、死後事務委任契約にかかわる悩みを解決するための情報をわかりやすく解説します。自分の死後の葬儀や遺品・財産の処理についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
死後事務委任契約とは何か
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に、葬儀や遺品の整理などの死後の事務を、信頼できる人に任せる契約のことです。この契約を結ぶことで、家族や親族に負担をかけることなく、自分の希望をかなえることができます。
法的根拠
死後事務委任契約は民法上の委任契約の一種です。
民法653条1項には、委任者が死亡した時には委任契約は終了すると規定されています。しかし、これは任意規定であって、特約によって変えることができるとされてきました。
この点については、平成4年9月22日に出された最高裁判所の判決でも認められており、死後の事務委任契約は有効とされています。
死後事務委任契約の生まれた背景
死後事務委任契約が生まれた背景には、以下の2つの要因が挙げられます。
- 核家族化の進展
核家族化が進むにつれ、家族や親族が離れて暮らすケースが増えてきました。そのため、葬儀や遺品の整理などの死後の事務を家族や親族に依頼することが難しくなってきています。
そこで、第三者に事務を委託しようというケースが増えてきているのです。
- 高齢化社会の到来
高齢化社会の到来により、一人暮らしの高齢者が増えてきました。一人暮らしの高齢者が亡くなった場合、葬儀や遺品の整理などの死後の事務を誰が行うのかが問題となります。
死後事務委任契約をお勧めしたい方
死後事務委任契約の締結を検討すべきと考えられるのは以下のような方達です。
- 一人暮らしの高齢者
一人暮らしの高齢者は、家族や親族が頼れる人がいないために、死後事務委任契約を締結するケースが多くあります。
- 家族や親族との間で、死後の事務に関するトラブルを避けたい人
家族や親族との間で、葬儀の形式や遺品の整理方法などに関する意見の相違がある場合、死後事務委任契約を締結することで、トラブルを避けることができます。
- 自分の希望をかなえたい人
葬儀の形式や遺品の整理方法など、自分の希望を叶えたい人にも、死後事務委任契約は有効な手段となります。
死後事務委任契約は、家族や親族に負担をかけることなく、自分の希望を叶えることができる便利な契約です。
一人暮らしの高齢者や、家族や親族との間で、死後の事務に関するトラブルを避けたい人、自分の希望を叶えたい人などは、検討してみるとよいでしょう。
なお、死後事務委任契約を締結する際には、以下の点に注意が必要です。
- 信頼できる人を受任者に選ぶ
死後事務委任契約では、葬儀や遺品の整理などの重要な事務を委任することになります。そのため、信頼できる人を受任者に選ぶことが大切です。
- 契約内容を明確にする
契約内容を明確にしておかないと、トラブルの原因となる可能性があります。葬儀の形式や遺品の整理方法など、自分の希望を具体的に記載しておきましょう。
- 公正証書で作成する
死後事務委任契約は、公正証書で作成しておくと、より安心です。公正証書は、公証人が作成するため、契約内容が公的に証明されます。
詳しくは後ほど、「死後事務委任契約を結ぶ際の注意点」の章で解説します。
死後事務委任契約を結ぶメリット
死後事務委任契約を結ぶメリットは、大きく分けて2つあります。
自分の希望を叶えることができる
死後事務委任契約では、葬儀の形式や遺品の整理方法など、自分の希望を具体的に指定することができるからです。
家族や親族に負担をかけない
死後事務委任契約を結んでおけば、葬儀や遺品の整理などの手続きを家族や親族に依頼する必要がないからです。
死後事務委任契約を結ぶための手続き
死後事務委任契約を結ぶための手続きは、以下のとおりです。
受任者を選ぶ
まずは、誰に死後の事務を委任するかを決めます。家族や親族、信頼できる友人や知人など、誰でも受任者になることができます。
契約内容を決める
次に、委任する事務内容や費用負担などを決めます。葬儀の形式や遺品の整理方法、債務の清算など、自分の希望を具体的に記載しておきましょう。
公正証書を作成する
死後事務委任契約は、公正証書で作成するのがおすすめです。公正証書は、公証人が作成するため、契約内容が公的に証明されます。
具体的な手続きの流れは、以下のとおりです。
公証役場に行き、死後事務委任契約の相談をする
公証役場に行き、死後事務委任契約の相談をします。公証人は、委任者や受任者の希望をよく聞き、適切な契約内容を提案してくれます。
契約書を作成する
公証人が契約書を作成してくれます。契約書には、委任する事務内容や費用負担など、委任者と受任者が合意した内容を記載します。
公正証書を作成・保管する
公証人が公正証書を作成します。公正証書は、公証役場で保管されます。
死後事務委任契約を結ぶ際には、以下のような費用がかかります。
公正証書作成手数料:委任状公正証書作成の手数料は、定額7,000円です。(手数料令18条)
契約書作成手数料:約3万円~(司法書士、弁護士などに依頼する場合)
なお、公証役場によっては、初回相談料や契約書作成料が無料のところもあります。
死後事務委任契約を結ぶ際の注意点
死後事務委任契約を結ぶ際は、以下の点に注意が必要です。
受任者を慎重に選ぶ
死後事務委任契約は、信頼できる人に任せることが大切です。受任者を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。
- 自分の希望を尊重してくれる人
- 事務処理能力が高い人
- 費用を負担してくれる人
自分の希望を尊重してくれる人
死後事務委任契約では、葬儀の形式や遺品の整理方法など、自分の希望を具体的に指定することができます。そのため、自分の希望を尊重してくれる人を選ぶことが大切です。
事務処理能力が高い人
死後事務委任契約では、葬儀や遺品の整理などの手続きを委任することになります。そのため、事務処理能力が高い人を選ぶことで、手続きがスムーズに進む可能性が高まります。
費用を負担してくれる人
死後事務委任契約で委任する事務には、費用がかかる場合があります。そのため、費用を負担してくれる人を選ぶことで、費用の負担を抑えることができます。
これらの条件を満たす人としては、以下の人が挙げられます。
- 家族や親族
- 信頼できる友人や知人
- 司法書士や行政書士などの専門家
家族や親族は、自分のことをよく知っているので、自分の希望を尊重してくれる可能性が高くなります。また、費用を負担してくれる可能性も高くなります。
友人や知人の場合は、家族や親族よりも信頼関係が薄い可能性があるため、慎重に選ぶ必要があります。
専門家の場合は、事務処理能力が高いため、手続きがスムーズに進む可能性があります。ただし、費用が高くなる可能性があるため、契約締結前に十分に確認しておくことが必要となります。
最終的には、自分の希望や考えに合わせて、最適な相手方を選ぶことが大切です。
死後事務委任契約で明確にしておくべき内容
契約書には、委任する事務内容や費用負担を明確に記載しておきましょう。
死後事務委任契約でよく締結される契約内容は、以下のとおりです。
葬儀の準備
- 葬儀の形式や場所、日程の決定
- 葬儀の費用の支払い
- 葬儀の参列者への連絡
遺品の整理
- 遺品の整理や処分
- 遺品の形見分け
債務の清算
- 未払いの公共料金や税金などの支払い
- ローンや借金などの返済
遺産の相続
- 遺言書の保管
- 遺産の分割
- 相続税の申告
これらの内容は、死後事務委任契約を結ぶ際に、必ず記載しなければならないものではありません。自分の希望や状況に合わせて、必要な内容を記載するようにしましょう。
以下に、具体的な契約内容の具体例をいくつか挙げてみます。
葬儀の準備の具体例
- 葬儀は、家族葬で、自宅で行う。
- 葬儀費用は、50万円以内に抑える。
- 葬儀の参列者には、近親者のみとする。
遺品の整理の具体例
- 遺品は、リサイクルや寄付で処分する。
- 形見分けは、子供に平等に行う。
債務の清算の具体例
- 未払いの公共料金は、受任者が支払う。
- ローンや借金は、受任者が返済する。
遺産の相続の具体例
- 遺言書は、受任者が保管する。
- 遺産は、法定相続分どおりに分割する。
- 相続税は、受任者が申告する。
このほかにも、以下のような内容を契約内容に盛り込むこともできます。
- ペットの葬儀や遺体の処理
- ペットの引き取り先の指定
- 墓地や納骨堂の選定
- 宗教的な儀式の実施
- 寄付や社会貢献の実施
死後事務委任契約を結ぶ際には、自分の希望や状況をよく整理し、必要な内容を記載するようにしましょう。
まとめ
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約は、死亡後の葬儀や遺品整理などの手続きを信頼できる人に依頼する契約です。これにより、自分の死後の希望を具体的に実現し、家族や親族の負担を軽減できます。
沿革と背景
核家族化と高齢化が進行し、死後の事務手続きが問題化してきたため、この契約が生まれました。
この法律の有効性については、民法653条1項が、委任者が死亡した時には委任契約は終了すると規定されているために問題視されました。しかし、これは任意規定であって、特約によって変えることができるとされてきました。
この点について、平成4年9月22日に出された最高裁判所の判決でも認められ、死後の事務委任契約は明確に有効とされています。
死後事務委任契約を検討すべき人
- 一人暮らしの高齢者
- 死後の事務に関するトラブルを避けたい人
- 自分の葬儀や遺品整理の希望を明確にしたい人
契約のメリット
- 自分の希望を具体的に実現できる。
- 家族や親族の手間や負担を減少させる。
契約の手続き
- 受任者の選定
- 契約内容の明確化
- 公正証書の作成
具体的な手続きには、公証役場での相談や契約書の作成、公正証書の作成・保管などが含まれる。費用は公正証書作成手数料が定額7,000円、契約書作成手数料が内容により異なり、約3万円程度からとなります。
契約時の注意点
– 信頼でき、事務処理能力が高い受任者を選ぶこと。
– 自分の希望や状況に合わせた内容を契約書に明記すること。
契約内容の例
– 葬儀の準備や実施方法
– 遺品の整理方法や分配
– 債務の清算や遺産の相続方法
– ペットの葬儀や処理、ペットの引き取り先など
死後事務委任契約は、自分の死後の事務をスムーズに進行させるための重要な手段です。自身の希望を明確にし、適切な手続きを行うことで、家族や親族の負担を軽減できる利点があります。
トータルブリッジでは死後事務委任契約を司法書士と結ぶことをお薦めしています。その理由は、以下のとおりです。
- 専門的な知識と経験を活かして、適切な契約内容を作成してくれる
司法書士は、法律の専門家です。死後事務委任契約に関する法律や実務の知識を豊富に持っており、委任者の希望に沿った適切な契約内容を作成することができます。
- 公正証書を作成し、契約内容を公的に証明してくれる
公正証書は、公証人が作成する公的文書です。公正証書で作成された死後事務委任契約は、契約内容が公的に証明されるため、トラブルの際にも安心です。
- 費用が公正証書役場の定める基準に沿って設定されている
司法書士に依頼する場合の費用は、公正証書役場の定める基準に沿って設定されています。そのため、費用面でも安心です。
このように専門家に依頼することで、具体的には以下のメリットが期待できます。
- 契約内容の漏れや抜けを防ぐことができる
司法書士は、死後事務委任契約の作成に慣れています。そのため、契約内容の漏れや抜けを防ぐことができます。
- 契約書の作成費用を抑えることができる
司法書士に依頼する場合、公正証書役場で作成する契約書の作成費用が無料になることがあります。
- 契約内容の説明や相談がしやすい
司法書士は、法律の専門家です。そのため、契約内容の説明や相談がしやすいです。
もちろん、家族や親族などの信頼できる人に依頼することもできます。しかし、司法書士に依頼することで、より安心して死後事務委任契約を結ぶことができるでしょう。
トータルブリッジでは死後事務委任契約についてのご相談も承っております。必要に応じて提携司法書士だけでなく、税理士をご紹介させて頂きます。
どんな些細なことでも「聞いてもらって良かった」と言われるように一生懸命お手伝いさせていただきますので、お気軽にお申し付けください。
トータルブリッジへのお問い合わせはこちらへ。
関連記事
コメント